2009年6月1日月曜日

The Parallax Viewという映画


’70年代はアメリカ映画もやりたいことをやっており、ポリティカル・サスペンスなどというジャンルも非常に面白い作品が沢山あった。

「コンドル」と並び「The Parallax View」(パララックス・ビュー)というのもその中のひとつ。

最近「イーグル・アイ」という陰謀を扱った映画が公開されましたが、The Parallax Viewに比べると時代が如何に駄目になっているかがよくわかるのです。
The Parallax Viewという映画に通底しているものは、リアリズムです。
監督のアラン・J・パクラは合衆国要人の繰り返される暗殺とその規則性に注目し、大衆に対するメディアを使った洗脳と合わせ、ミステリー娯楽作品に仕立て上げています。
この作品や「ダラスの熱い日」こそ、本物のリアリズムをベースに創られた傑作だと思います。
これらに比べればオリバー・ストーンの「JFK」なんて陳腐なB級作品に過ぎません。

連続して上院議員が殺害され、その謎に一人で立ち向かうジャーナリストを描いたこのThe Parallax Viewについてこんなことが紹介されています。

「ストイックなエンタメ性も加味された劇場長編としてリリースされたこの作品、先にも述べた通り、その未曾有の緊張感は昨今のサスペンス作品などでは体験出来ないもの。ロングショットを多用する事でその緊張感に幅を持たせる演出や、寸鉄のアクションと無駄の無い特殊効果で醸し出される迫力の映像など、視覚的にも極上の部類に入る作品だが、その最たる醍醐味は、究極の大スクープとでも云いたくなるシナリオのポテンシャル。カーテンウォールの摩天楼に囲われる国家黙認の暗殺者集団と孤高のジャーナリストの対決を描く物語など、昨今では一蹴に伏されてしまう陳腐なシナリオと云う事になってしまうが、その全ては70年代のアメリカでの真実が描かれたものなのである。」(Flyer’s Nostalgiaの記事より引用)

ここで重要なのは、「今では陳腐なシナリオ」ということになってしまうという部分ではないかと思われます。
何故「陳腐」なのか?
2000年代に入り、あまりにもあからさまに様々な出来事が起こるので、人はその非現実的な出来事の理由と原因を説明できないまま、すべてはテロ集団の悪という図式を鵜呑みにし、納得しようと努力している。本当にテレビや新聞の説明で、納得していますか?
そんなはずはないと僕は思う。
「陰謀論」=「陳腐」という図式が出来上がり、The Parallax Viewのような作品が生産されにくくなっているのが現状です。
The Parallax Viewは、かつては存在し、今では絶滅しかけているまっとうなメディアによる巧妙な内部告発の映画です。
「イーグル・アイ」などは子供だまし以上に大衆のミスリーディングを引き起こす可能性すらあると、僕は危惧します。これは遊園地的な娯楽作品であり、現実がこんな風になるわけないだろうと、大衆に念を押す機能を持つ映画です。
ただし、監督によれば'70年代のThe Parallax View等の映画を念頭に入れて作ったということなので、ひょっとしたら新しい風が吹いているのかもしれませんが。
幸いなことに、2009年今現在、ハリウッド製大衆操作娯楽作品は確実に観客動員を減らしています。
The Parallax Viewという映画が示唆したのも、暗殺という陰謀のみならず大衆操作という手段の存在でした。
グレン・エリクソンという人がこの映画について次のように述べています。

「 ......The Parallax Corporation controls the minds of men through the persuasion of cinema propaganda. Are we really affected by the barrage of images in our daily lives? Perhaps the lesson of the 'Audition Film' of Parallax should be that EVERY SHOW and every image we see has the potential to affect us, and that none of us is immune. 」
             (Text Copyright 1999 Glenn Erickson)

つまり、免疫のない我々をメディアが操作するのは容易いということです。
意識のあるジャーナリストを洗脳しようとするこの映画の最も有名な場面を観て欲しい。
きっと、身近な何かに気がつくはずだ。
パララックスとは「視差」のこと。カメラのファインダーから覗いた風景と実際に撮影される風景のずれ。僕らは見えたとおりの現実を生きているわけではないということ。
The Parallax Viewは、今そこにあるのだから。

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