2013年6月29日土曜日

チーフ・シアトルの手紙


Dances with Wolves 1990
この前、映画『ダンス・ウィズ・ウルブズ』を考えていた。

不思議な映画で、1990年に公開されたときは高評価プラス大ヒットプラスアカデミー賞受賞とという華々しさだったが、いつしか忘れられてしまった。
勿論、忘れられてなどいないが、今やテレビで放映されることもない、話題に上ることもない、更にその価値も振り返られることがない。
何故なのだろう?

現在、アメリカでネイティブ・アメリカンの権利運動を行っている人物にデニス・バンクスがいる。

Dennis Banks (born April 12, 1937), a Native American leader, teacher, lecturer, activist and author, is an Anishinaabe born on Leech Lake Indian Reservation in northern Minnesota. Banks is also known as Nowa Cumig 

かなり過激な運動家である彼だが、その精神は過去の歴史上の祖先たちと何ら変わらない。神聖な髪を伸ばし、三つ編みにし、デニムに身を包む。その生活はダンス・ウィズ・ウルブズさながらである。実際、映画は彼らの生活を描いていたとも言えるのではないか。そんな風にも思う。
ダンス・ウィズ・ウルブズが忘れられていったのは、AIM(American Indian Movement - インディアン権利団体の「アメリカインディアン運動」)というデニスたちの運動に対するネガティブな反応と軌を一にしているような気がする。
彼らの主張は過去のものではない。
かつて、シッティング・ブルと呼ばれたスー族の酋長・タタンカ・イヨタケは、白人の学校にスー族の若者を入学させようと合衆国政府が言い出したとき、次のように言ったそうだ。「・・・むしろ逆に、君たち白人の若者を我々の所によこしたまえ。自然の中で生き抜く方法を教えてあげよう」
勿論、合衆国政府はすぐに断った。

今もなお、ネーティブ・アメリカンたちのこれまでの過酷な運命をしっかりと世界に伝えられてはいないのである。僕らは彼らの現実をどれだけ知っているだろう。
同様に、僕らは僕らの過去も実はあまりよく分かっていないのである。
デニスたちの態度に、日本人である僕らも学ぶ必要がありそうだ。すなわち、歴史はなにも終わってはいないのだということ。日本人も、ネイティブ・アメリカンも、共に検討し直さなければならない深い歴史の溝を抱えているのである。
そんなことを考えていたとき、不思議なことに、ミュージシャンの友人「キリロラ☆」さんから、一枚のテキストを頂く。
それが、「チーフ・シアトルからの手紙」であった。

はじめに断っておくが、実際にチーフ・シアトルという人物の手に成る手紙かどうかは不確かだ。だが、仮に別の人物によるものだとしても、その手紙の内容は陰るどころか、輝きを増すように思う。ここに書かれているのは、単なる自然保護に対する言説ではない。むしろ、世界と僕らの関係を的確に表現した「世界に対する覚え書き」といった類いのものだと思う。人は、常に傲慢になっていく可能性がある。その傲慢さは、己が世界の中心であるという錯覚から生じるのだが、チーフ・シアトルの言葉は、世界の中心は己にあっても、他のすべてが、同様に世界の中心なのだから、特定の何かがトップに立つなどということはあり得ない、という自然の状況を伝えている。
現代の人間はどこか不自然なのだ。その不自然さを認めないかぎり、その不自然さを受け止めないかぎり、人間は果てしなく自分本位の傲慢で脆弱で破壊的で破滅的な存在に堕してしまうだろう。そんなことをこの手紙は考えさせてくれる。ここには、たとえば鯨を捕ることが残酷だとか、その代わりに牛を喰えだとか、そんな陳腐なことは何ひとつ出てこない。すべてを商業的な視点から見てしまう現在のこの世界において、この手紙には、商業から最も遠い、見事なまでの「詩」があるのである。
僕たちに必要なのは、詩のような世界認識なのだと思う。あの青い空を僕らは、そもそも売り買いできるはずがないのだ。



『チーフ・シアトルの手紙 ーすべての人々へー』翻訳:上野火山

【チーフシアトルはアメリカインディアン・スカーミッシュ族の酋長であり、伝えられるところによれば、1800年代にアメリカ政府に手紙を書いたと言われている。その手紙の中で、彼はあらゆる物事の中にある神というものについて最も深い理解を示したのだった。ここに彼の書いたその手紙がある。それは世界中のあらゆる国々のすべての親や子供がその心や精神に刻みつけておくべき言葉である。】

「チーフ・シアトルの手紙

ワシントンの大統領が、我々の土地を買いたいと言ってくる。
しかし、あなた方は、空や、大地を、どうやって売り買いすることができるのだろう?そのような考え方は我々には奇妙に思える。もし我々が空気の清らかさや水のきらめきをそもそも持っていないとしたら、あなた方はそれをどうやって買うことができるのか?
この地上のすべてのものは我々人間にとって聖なるものだ。すべての輝く松の葉の一本一本が、すべての岸辺の砂粒ひとつひとつが、すべての暗い森に煙る霧が、すべての牧草地が、そしてすべての音を立てるあの虫たち、そのすべてが我々人間にとって、記憶や経験の中の神聖なものたちなのだ。我々は木の中を流れる樹液の存在を知っている。我々が自分の血管の中を血液が流れているのを知っているように。我々はこの地上の一部であり、この地上もまた我々の一部なのだ。あの香しい花は我々の姉妹であり、熊も、鹿も、大鷲も、すべて我々の兄弟なのだ。
岩だらけの頂も、牧草地の露の滴も、子馬の身体のぬくもりも、人も、すべて同じ家族の一員なのだ。
せせらぎや川を流れる輝く水は、単なる水ではなく、我々の祖先の血そのものだ。もし我々があなた方に我々の土地を売るとする、ならばあなた方はその土地が聖なるものだということを忘れてはならない。湖の透明な水に反射するその艶やかな輝きひとつひとつが我々の先祖の生活に起こったことや記憶を伝えてくれる。その水の呟きは、我々の父の、更にその父の声なのだ。
川は我々の兄弟。川が我々の喉の渇きを癒やしてくれる。川が我々のカヌーを運び、子供たちに食べ物をくれる。だから、あなた方は自分の兄弟に与える優しさを、川に与えなければならない。
もし我々があなた方に我々の土地を売るならば、空気が我々にとって貴重なものであり、空気がそれを支えるあらゆる生き物とその魂を共有し合っているということを忘れてはならない。我々の祖父に最初の息を与えた風は、彼の最後の溜息も受け止めたのだ。その風はまた我々の子供たちの命にその魂を与える。だから、もし我々が我々の土地を売るとすれば、あなた方はその土地を他とは区別し神聖なものとしておかなければならない。すなわち、人が牧草地の花によって甘く香る風を味わいに行けるような場所として。
あなた方の子供たちに、我々が我々の子供たちに教えてきたことを教えてはもらえないだろうか?つまり、大地が我々の母だということを。地上に降りかかるものは地上のすべての息子たちに降りかかるということを。我々が知っているのはこういうことだ。大地は人間のものではない。人間こそが大地のものなのだ、ということ。
すべてのものは我々皆を繋ぐ血液のように結び合っている。人が生命の網の目を編んでいるわけではない。人は単に生命の一本の撚糸(よりいと)にすぎないのだ。網の目に対し何をしようとも、人は自分に向かっているだけだ。
我々が知っていること。それは、我々の神も又あなた方の神である、ということ。地上は神にとって貴重なものであり、地上を汚すことは地上の創造者に対し侮辱することになる。あなた方の運命は我々にはわからない。バッファローが絶滅させられた後、何が起こるのか?野性の馬たちが飼い慣らされたら、どうなるのか?
森の秘密の場所が多くの人間の匂いで充満し、熟した丘の景色も、電話線で汚されたら、どうなるのか?雑木林はどこへ行ってしまうのか?消えてしまうのだ!あの鷲はどこへ行くのだろう?消えてしまうのだ!そして、何が、足の速い子馬にさよならを言って、それから狩りをすることになるか?生きることが終わり、生き残る事が始まるのだ。最後の赤い人間がこの野性と共に消えてしまい、彼の記憶はただ平原を吹き渡る一片の雲の影にすぎなくなる時、これらの岸辺や森はこれからもここにあるのだろうか?我々の仲間達の魂が、幾何かでも残っているのだろうか?我々は生まれたばかりの赤子が母親の鼓動を愛するように、この大地を愛する。我々が慈しんできたように、大地を慈しんで欲しい。大地の記憶を、あなた方がそれを受け止めたときのように、心の中にとどめておいて欲しい。すべての子らのために大地を守り、愛して欲しい。まるで神が我々を愛するように。
我々がこの大地の一部であるように、あなた方もこの大地の一部なのだ。この地上は我々にとってかけがえのないもの。それはあなたがたにとってもかけがえのないもの。
我々が知っているのはこういうことだ。
独りの神しかいないということ。赤い人間であれ、白い人間であれ、人は分けることはできないということ。我々は、結局は、皆兄弟なのだから。」


■原文■
Chief Seattle's Letter To All THE PEOPLE

【Chief Seattle, Chief of the Suquamish Indians allegedly wrote to the American Government in the 1800's - In this letter he gave the most profound understanding of God in all Things. Here is his letter, which should be instilled in the hearts and minds of every parent and child in all the Nations of the World: 】

CHIEF SEATTLE'S LETTER 

"The President in Washington sends word that he wishes to buy our land. But how can you buy or sell the sky? the land? The idea is strange to us. If we do not own the freshness of the air and the sparkle of the water, how can you buy them?
Every part of the earth is sacred to my people. Every shining pine needle, every sandy shore, every mist in the dark woods, every meadow, every humming insect. All are holy in the memory and experience of my people.
We know the sap which courses through the trees as we know the blood that courses through our veins. We are part of the earth and it is part of us. The perfumed flowers are our sisters. The bear, the deer, the great eagle, these are our brothers. The rocky crests, the dew in the meadow, the body heat of the pony, and man all belong to the same family.
The shining water that moves in the streams and rivers is not just water, but the blood of our ancestors. If we sell you our land, you must remember that it is sacred. Each glossy reflection in the clear waters of the lakes tells of events and memories in the life of my people. The water's murmur is the voice of my father's father.
The rivers are our brothers. They quench our thirst. They carry our canoes and feed our children. So you must give the rivers the kindness that you would give any brother.
If we sell you our land, remember that the air is precious to us, that the air shares its spirit with all the life that it supports. The wind that gave our grandfather his first breath also received his last sigh. The wind also gives our children the spirit of life. So if we sell our land, you must keep it apart and sacred, as a place where man can go to taste the wind that is sweetened by the meadow flowers.
Will you teach your children what we have taught our children? That the earth is our mother? What befalls the earth befalls all the sons of the earth.
This we know: the earth does not belong to man, man belongs to the earth. All things are connected like the blood that unites us all. Man did not weave the web of life, he is merely a strand in it. Whatever he does to the web, he does to himself.
One thing we know: our God is also your God. The earth is precious to him and to harm the earth is to heap contempt on its creator.
Your destiny is a mystery to us. What will happen when the buffalo are all slaughtered? The wild horses tamed? What will happen when the secret corners of the forest are heavy with the scent of many men and the view of the ripe hills is blotted with talking wires? Where will the thicket be? Gone! Where will the eagle be? Gone! And what is to say goodbye to the swift pony and then hunt? The end of living and the beginning of survival.
When the last red man has vanished with this wilderness, and his memory is only the shadow of a cloud moving across the prairie, will these shores and forests still be here? Will there be any of the spirit of my people left?
We love this earth as a newborn loves its mother's heartbeat. So, if we sell you our land, love it as we have loved it. Care for it, as we have cared for it. Hold in your mind the memory of the land as it is when you receive it. Preserve the land for all children, and love it, as God loves us.
As we are part of the land, you too are part of the land. This earth is precious to us. It is also precious to you.
One thing we know - there is only one God. No man, be he Red man or White man, can be apart. We ARE all brothers after all."