2009年6月26日金曜日

ベルリン


ベルリン 天使の詩 1987

天使が人に恋をして、人になろうとすると、死ななければならない。
天使は人として、地上を去らねばならない。
そんな、決まりがあるにもかかわらず、あえて人間になろうとした天使がいた。

サーカスの女性に惹かれ、地上に降りることを決意する天使。
彼は、仲間の天使に語る。


天使として永遠に生きることはすばらしい・・・
でも、時々そんな自分にうんざりすることがあるんだよ。

永遠に空中に浮いているよりも、
自分の重さを感じたい。

永遠の命をすてて、地上に自分を縛り付けてみたい。

子供を授かりたいとか、植物を植えてみたいとか、
そんなんじゃないんだ。

でもね、思うんだよ、
長い道を歩いてさ、家に戻ってくる、フィリップ・マーローみたいに、
で、猫に餌なんかあげてさ。

時には熱が出たり、
新聞のインクで指先を真っ黒にしたり、
人の精神にワクワクさせられるんじゃなくて、
ただ食べ物でワクワクしてみたいんだ、
首の曲線とか、耳の形とか・・・・


映画『ベルリン 天使の詩』の僕が最も好きな場面と科白です。

永遠の命を持つ天使が、人間の限りある命故に感じられる様々なリアルな断片に憧れる場面。
時として、あまりに当たり前で普通すぎることなので、特に省みられることのない日常の些末な部分。
彼の語るどれもが「普通」だけれど、有限な僕たちの生を彩る様々な部分の集合です。

この天使のように目を覚ましたい。
映画の中で描かれたように、モノクロ画像からカラー画像へ変えたい。
痛みすら喜びだと思いたい。
悲しみすら生きている実感だと思いたい。
こうして僕らは今日も生きているんだ。
僕らは天使じゃない。
僕らは彼らの憧れた、終わりのある「人間」なんだ。

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