2009年7月3日金曜日

幻のドラマ


『さよなら・今日は』(1973~74年/25回)日本テレビ
< Chinchiko Papalogより転載>
僕が演劇にのめり込むきっかけになったのは、ボロボロの映画館「オリオン座」でみた数々の古い時代の映画たちと、NHKの「少年ドラマシリーズ」をはじめとする昭和のテレビドラマだった。ほんとによく観たな、オレ。
ところが、そのテレビドラマの多くが今や観ることができません。
たとえば、「少年ドラマシリーズ」の名作といわれた作品でさえもビデオ原盤が残っていないという状況。かつては高価なビデオテープを使い回していたから、ということらしいのですが、本当に残念なことです。大学の若い学生や演劇を志す若い世代に伝えたくても素材がないというのは残念でなりません。

そんな今や失われ観ることのできないテレビドラマのひとつに「さよなら・今日は」があります。局の20周年記念行事として作られたドラマなのですが、現在は制作した日テレにもビデオは残っていないそうです。従って、DVDでも観られない。「昨日、悲別で」のようにシナリオも出版されていませんので読むこともできません。
このドラマに関しては詳しく調べた方がいらっしゃるので、そちらへジャンプしてご覧頂ければ嬉しいです。ドラマの細部が確認できるはずです。Chinchiko Papalogさんに感謝!!

ここでは、僕のこのドラマに対する思いを書いておこうと思います。
このドラマがオンエアーされている頃、僕は中学三年生で、だいぶ意識的
映画やドラマを観るようになっていました。今よりも正直ドラマの質もはるかに濃かったので、登場人物の存在感や背景となった下落合に惹かれて観ていたのを覚えています。
今となってみれば信じられないぐらいそうそうたる脚本の先輩たちが交代で書いていたドラマなんです。早坂暁さん、清水邦夫さん、高橋玄洋さん、向田邦子さん、山田太一さん、市川森一さん、倉本聡さん…等々(Chinchiko Papalogさんより)。
下落合の古い洋館に住む一家が、家をなくし離散するまでの話を丁寧に描いておりました。登場人物一人一人の未来と夢と挫折を東京の町並みの中に見つめていた。
東京に憧れたきっかけになったドラマだったな。
心臓病の末娘(栗田ひろみ)は僕自身と年齢がほとんどかわらなかったので、それで感情移入してしまったのかもしれません。
でもね、今でも、時々このドラマの話が話題に出るんです。それだけ、なにかこちらに迫るものがあったんだろうな。もしかしたら、それは今あまり語れることがなくなっているけれど、「場所」の感覚かもしれません。
ドラマには決定的な「場所」が必要です。どこでもいいわけじゃない。決定的な場所。このドラマではそれが「下落合」だったんです。
五月の僕の舞台は下落合の劇場で上演しました。実は、みんなには内緒で下落合を少し歩いたんです。腰が苦しかったにもかかわらず、ドラマの舞台をもう一度見てみたかった。ドラマで何度も登場した相馬坂を歩いてみました。
ガードレールが変わったぐらいで、面影は昔のまま。
僕はこれからも様々なドラマで西荻窪や吉祥寺を描くけれど、相馬坂を歩いて、やっぱりドラマは場所が生み出すものかもしれないな、という思いが強くなりました。
ドラマの音楽だけはYou Tubeで聴けるようです。
音楽を聴くだけで、細部が蘇ってくる。ほんと不思議ですね。

ドラマ主題歌「愛の伝説」まがじん

挿入歌「さよなら、今日は」朝倉理恵

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