2009年7月3日金曜日

ピアノの愛


4分間のピアニスト:Vier Minuten 2008

八十歳を過ぎて刑務所で音楽教師をするクリューガーが出逢った殺人罪で収監されている少女ジェニー。
ジェニーが他の囚人と違っていたのは、彼女がピアノの天才であったこと。
自分の感情を抑えられず暴力的な彼女を指導するクリューガー自身、戦争で受けた傷を抱えている。クリューガーは同性愛者である。それぞれ年齢も生きてきた時代も置かれている環境もまったく違う二人が、ただひとつ「ピアノ」を通じて出逢い、互いを認めさせようとぶつかり合う。それは、出逢いというよりむしろ衝突といった方が良いかもしれない。
映画は二人の女の激しくも悲しい衝突を抉り出すように描いている。

昨日授業で扱った吉田喜重監督の言葉ではありませんが、生み出された作品は時として安っぽい人生論めいたものなんか拒否する、あるいは泣けるなどという評価を無効にするようなパワーを持つことがあります。この作品は、まさにそんなもののひとつだと思います。
登場人物二人から人生論を引き出すことなど到底できはしない。むしろ、観客の僕らにできることは、彼らの「まなざし」と「たたずまい」、そして「音楽」に身を投じること。
「共感」しなければ決してわからない。
つまり、標準的な価値観から抜け出し、この映画の中の価値観を発見し味わう責任が観客の中に在る。そんな映画。
ラストの音楽のアレンジひとつとっても、人によっては嫌悪感を持つ人も大勢いるはずです。
とてつもなく暴力的で破壊的で、いわゆるクラシックからは逸脱しているから。現代音楽では在り得る形体だけれども、穏やかにクラシックを味わいたいむきには嫌われるタイプの音楽かもしれません。
その意味で、観客を選ぶ映画だと僕は思う。
しかし、2004年に実在した老ピアノ教師クリューガーが亡くなったと聞けば、荒唐無稽に思えるこの物語も、事実を踏まえた有り得たであろうもうひとつの真実を見つめた作品であることがわかってくるような気がします。勿論、フィクションですが。

二人の日本人ピアニストが関わっている映画です。その演奏が素晴らしいんだ☆
シューベルトを木吉佐和美さん、そして、ラスト4分のピアノを白木加絵さんが弾かれました。

「4分間のピアニスト」予告編


ラスト4分間の怒濤のピアノプレイ☆☆☆

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