2009年10月7日水曜日

隠し剣という名の悲しみ

『隠し剣鬼の爪』2004松竹

片桐宗蔵という一人の名もない平侍の人生の転機を描く物語でした。
歴史の中で消えていった無名の人々の生前の生活を作家・藤沢周平は大切に描きました。
映画監督・山田洋次さんは時代劇三部作のその丁度真ん中の作品として、この「隠し剣鬼の爪」を映画化しました。

山田監督の時代劇はどれも素晴らしいですが、僕は特にこの「隠し剣鬼の爪」が好きです。

途中の友人との決闘で、隠し剣を使うものだと思い込んでいたので、隠し剣の正体を知ったとき、何故一子相伝の秘術なのかがわかりました。(まだ観てない人ためにナイショ☆)

あまりに悲しすぎるその秘術の存在を捨て、侍という立場を捨て、松前(函館)へ行こうと決意する宗三。
そして、実家へ帰らせたお手伝いの「きえ」の元へ。

「一緒に来てくれねが?松前行って、商売でもはじめようがなってな」
「命令でがんすか?」
「んだ。命令だ」
微笑む、きえ。

嫁いだ先でひどい目にあったきえを助け、一緒になりたいと思いながら果たせなかった宗三。
だが、全てを捨てたとき、きえだけが彼のそばに残った。

一番大切なのは、すべてを失ってもなお目の前にあるもの。
もし人生で、それに気づくことができれば、それが幸福というものだろう。

隠し剣を埋めた宗三。
だが、
隠し剣という悲しみを埋めたからこそ、
きえという幸福を手に入れることができた。

久々にhappy endingもいいもんだと思う。
この映画のラストの暖かさは、貴重だと思う。

『隠し剣鬼の爪』予告編

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