青ク深イヨル
セカイヲカエヨウ
ソコカラナニガミエル?
ー ASIAN KUNG-FU GENERATION 或る町の群青 ー
「小さな小説」ソコカラナニガミエル?
自転車を走らせていた。
その日、帰宅したのが早かったので、娘を近所の塾まで迎えに行って、と妻。夜九時。階段を六階から一気に駆け下りて自転車置き場までダッシュ。
風は吹いてはいないけど、空気がやけに冷たい。12月ですからね、当然か?凍ったアスファルトの上を自転車で走り出す。
坂道を下る。左側にいつもの花壇が見える。
左折する。マンションの間の道をしばらく直進。
T字路が見えてきた。そこを右折。
更に坂を下るが、ここは思い切りペダルをこいでやる。やがて上り坂にさしかかるが、勢いでそのままぐんぐん進んでいく。
正面に府中街道が見えてくる。
その向こうに小さな公園が見える。
鼻をすする。息が白い。手がかじかんできた。だいぶペダルをこぐ足が重くなってきた。歳かな。
白いものがハンドルを握る指先にあたっては消えていく。顔にもぽつぽつ当たり始める。
雪だ。おお珍しいな。12月に雪かよ。
府中街道を車が走る。
僕はいつもこの横断歩道のところで娘を待つことにしている。
待っても待っても、彼女は来ない。時計を見ると、もう十五分も過ぎている。さすがに足下が冷えてくる。雪は大粒になり、空中を漂いながら、地面に落ちては消えていく。二十代の頃は冷えるなんて考えたこともないんだけどなぁ、などと考えてみる。
でも冷える。それにしても遅い。
「ったくしょうがねぇな・・・」
何かが動いた。正面の暗い小さな公園のジャングルジムの上で何かが動いた。四車線で結構幅のある車道の向こうに眼をこらす。
ジャングルジムの上にちょこんと座って夜空に両手を挙げている。
娘だ。
なにやってんだよ、と思って見ていると、彼女がジャングルジムの上に立ち上がり雪を食べようとしているのか、大きく口を開けている。
声をかけようとした。おーい!声をかけようとした。
でも、やめた。
雪の降る空に向かって手を広げ口を開け、何かを見ているのがわかったから。
紺色の夜空の向こうに、何かを探しているのがわかったから。
ねぇ、
ソコカラナニガミエル?
※ 本物のPVではありませんが、すっごくいいですよ☆
『ASIAN KUNG-FU GENERATION 或る町の群青』
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