2009年11月16日月曜日

二人のトム・ウルフ

Thomas Wolfe:1937.4

米国には二人のトム・ウルフがいる。

一人はエスタブリッシュメントを自負するオッチョコチョイのベストセラー作家。そしてもう一人は、1938年にこの世を去った身長2メートルの作家。

今はほとんど話題にされることもない人物かもしれませんが、僕はこの身長2メートルの作家トーマス・ウルフに惹かれます。
日本語で翻訳されている本は、僕の知る限りでは「天使よ故郷を見よ」しかないと思われます。

NOVELS
「天使よ故郷を見よ」:Look Homeward, Angel, A Story of the Buried Life
New York, C. Scribner's Sons 1929.

Of Time and the River; a Legend of Man's Hunger in His Youth
New York, C. Scribner's sons, 1935.

The web and the rock.
New York, Harper & brothers, 1939.

You can't go home again.
New York, Harper & Brothers, 1940

SHORT STORIES AND VARIOUS COLLECTED WRITINGS
From Death to Morning
New York, Scribner's Sons, 1935

The Story of a Novel
New York, Scribner's Sons, 1936

The Face of a Nation; Poetical Passages from the Writings of
Thomas Wolfe

New York, Scribner's Sons, 1939

The Hills Beyond
New York, Harper 1941

A Stone, A Leaf, A Door; Poems by Thomas Wolfe,
selected and arranged in verse
by John S. Barns
New York, Scribner's Sons, 1945

A Western Journal: A Daily Log of the Great Parks Trip,
June 20 - July 2, 1938

Pittsburgh, University of Pittsburgh Press, 1951

Short Novels. Edited, with an introduction and notes,
by C. Hugh Holman
New York, Scribner's Sons, 1961

Thomas Wolfe's Purdue Speech: Writing and Living.
Edited from the dictated and revised typescript
West Lafayette, Ind.: Purdue University, 1964

The Notebooks of Thomas Wolfe. Edited by
Richard S. Kennedy and Paschal Reeves
Chapel Hill, University Of North Carolina Press, 1970

A Prologue to America.
Edited and with a Foreword by Aldo P. Magi
Athens, OH: Croissant and Company, 1978

The Autobiography of an American Novelist.
Edited by Leslie Field
Cambridge, Mass.: Harvard University Press, 1983

The Complete Short Stories of Thomas Wolfe.
Edited by Francis E. Skipp; introduction by James Dickey
New York: Scribner, 1987

The Good Child's River.
Edited and with an introduction by Suzanne Stutman
Chapel Hill: University of North Carolina Press, 1991

The Lost Boy: a Novella.
Edited and with an introduction by James W. Clark, Jr.;
illustrations by Ed Lindlof
Chapel Hill: University of North Carolina Press, 1992

The Party at Jack's.
Edited and with an introduction by Suzanne Stutman
and John L. Idol, Jr.
Chapel Hill: University of North Carolina Press, 1995

フィクション(小説)だけでもこれだけあるのに、日本語で読むことが実は難しい作家ではあります。故に、ほとんどの日本人は知ることのない作家なのかもしれません。
彼は泥臭く自伝的な物語を通して米国の庶民の歴史を描きました。米国の当時ですら徐々に失われつつあった米国人の真の生活とその周辺の細かなリアリティーを記述することで、アメリカ人の内省を実行した人物でした。多くの同世代の「失われた世代」のようにヨーロッパに逃避することなく、冷蔵庫の上をデスク代わりに執筆したという話は、今もなお伝説として残っています。

今時代が変わりつつあって、この日本にも古い時代の米国を描いたこの作家の作品を受け入れる土壌が出来上がってきているのではないかと思うのです。というのも、彼の描いた過酷な時代の米国の風土が今の日本の風土に限りなく近い感じがするからです。八十年代や、バブルのはじけたといわれた九十年代よりも、今がトーマス・ウルフの生きた人でなしの時代の米国に似ている。
デビュー作である「天使よ故郷を見よ」は、まさに世界大恐慌のはじまるその直前に書かれているのです。
まさに、人でなしな時代に「人になる」ために読むべき書物が、彼トーマス・ウルフの小説のような気がします。
まずは新潮文庫で「天使よ故郷を見よ」を読んでみてください。
そこに描かれるのは、どうしょうもない人間の世界で、より良く生きようと苦闘する人間の物語です。物語る原点がここにあると、僕は思う。

四十代まで生きることのなかったトーマス・ウルフに感謝☆
あなたの作品で僕の立ち位置が見えてきましたよ。

Creative Quotations from Thomas Wolfe for Oct 3

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