その少女は休み時間になると、いつも鉄棒にぶら下がっていた。
ぶらさがって、下から見上げる空は、どこまでも広く、思わず吸い込まれそうになる。
「おーいッ!空よ!」と少女は心の中で叫んでみる。
確かに誰かが遙か遠いところから「元気かい?」と答えてくれる。
空よ、お願いだ。この娘を見守り、慰めておくれ。
場所が変わっても、環境が変わっても、空を見上げることを決して忘れないこと。
地面に張り付いて生きるしかないが、心はいつでも空の上にある。
空の上からしか見えないものがある。
空よ。とその娘の父は思う。
少年の頃、あなたに慰められたことが何度もある。
やがて、時がたち、少年が父になり、娘に語る言葉を失うとき。
そんなとき、あなたを思い出すのです。
見上げれば、そこにある・・・あなたを。
小手先の技術は、空を見上げる孤独に確実に負ける。
技術によって夢が支えられているのではなく、孤独が夢を強化するのだ。
今日も空を見上げよう。
そう、今日の空は二度と戻ってこないのだから。
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