夏の日に、外の蝉の声を聴きながら観たい映画。
是枝監督の『歩いても 歩いても』はそんな映画だ。
少年を助けようとして命を落とした兄の十五回目の命日、実家に戻った弟の一家と年老いた父と母、そして姉の一家。
物語は淡々と過ぎてある一夏の風景が描き出される。
しかし、ありふれた風景の中に、静かだが激しく行き交う情と情。心と心。
当たり前の普通の風景が、たまらなく胸に迫る。
日常はこんなにもドラマに満ちている、と改めて思わせてくれる。そんな映画。
大宣伝映画にうんざりする向きには、心の糧となり、魂の清涼剤になる映画だと思うな。
ただし油断は禁物。
口に優しい、人情喜劇ではありません。毒のたっぷりこもった物語ですよ。
日常生活にちりばめられた毒の数々。
それに気づき、知るほどに胸が締め付けられるのです。
この映画はもっと知られて良いと思うんだけどね。
映画『歩いても 歩いても』予告編
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