2008年9月28日日曜日

より良い場所

どうも僕たちは、今目の前の場所、あるいは現在の条件より良い場所や条件が他にあると思いこんで苦しんでいるような気がしてなりません。
きっと他にはもっと良い場所があるのかもしれませんが、今ここを捨てて彷徨うことは終わりなき旅です。世に言う「自分探し」という言葉の持つ危うさと胡散臭さがここにあります。
隣の芝生とは良く言ったもので、隣の芝生を夢見ているうちは、我が家の豊かさに決して気がつくことはないでしょう。ですが、あらゆる可能性はここにあるのだと思います。良いことも悪いことも、可能性の萌芽は、今この場所にすべてある。

以前、ある学生からテレビドラマの『池袋ウェストゲートパーク』の話を聞きました。
僕は原作を立ち読みし、ドラマは全篇観ていました。お気に入りのドラマのひとつです。実はドラマの方が原作より数段上だなと思った記憶があります。それは、恐らく池袋という場所のリアリティーと、自分の愚かさがドラマの方に濃く現れていたからかな、という気がします。
そのドラマの最終回、主人公は二つの敵対するギャング団の間に割って入り、仲裁する場面がありました。殴られてボロボロになりながら彼が叫んだ言葉は「ブクロ最高!」でした。
彼らはこの狭い東京に暮らしながら、決して池袋から出ることはない。他に良い場所もあるのかもしれないが、今ここに生きることを選んだ少年達でした。
胸打たれるのは、要領よく場所や条件を変えて渡り歩く賢さを諦めた「潔さ」だと思うのです。

より良い場所を求めない。
これもまた重要な人生の潔い決断なのだと僕は思っています。

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