2006年7月15日土曜日

雷雨の中で

午前中はまさに夏という感じで晴れていたのに、突然雷の轟音と共に激しい雨が降り出した。

家の近所の軒下に黒っぽい虎猫が一匹暮らしている。
ミーちゃんと下の娘が呼んでいる。

雷雨の中、ベランダからミーちゃんが路を渡っていくのが見える。
ミーちゃんには右の前足がない。
雨に打たれながら、ぴょこんぴょこんと歩くミーちゃんはずぶ濡れである。
ミーちゃんは、確かにみっともない猫である。
毛並みも美しいとは言い難い。
猫なのに敏捷でもない。
声をかけても、返事を返してくれることもあるし、返してくれないこともある。

でも、ミーちゃんは決して嘆かないし、諦めないのである。
生まれたときから、前足がなかったミーちゃんは、娘たちに言わせれば「ふてぶてしいぐらい強い!」猫なんである。

ミーちゃんが路を渡った直後、大きなトラックが行きすぎた。
ミーちゃんは、生け垣の葉っぱの中に隠れ、空を眺めている。
ほとんどない右足の先端をときどき舐めている。

決して長いとは言えない生命の一日。
ミーちゃんは雷雨の中で、今日を味わっているのかもしれない。

ふいに雨がやみ、光が射し込んできた。
生け垣の下に、
ミーちゃんの姿はもうなかった。

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