2005年10月25日火曜日

みんなにあいにきた

「あのね、パパ」

と五歳になる娘が言った。

「パパはそんなにしごとが好きなの?」

娘は僕の膝の上にいる。書斎。
僕は夢中になって、パソコンに向かいキーボードをひっきりなしに叩いている。
ふと見ると、膝の上の娘が肩越しにこちらを見上げている。
僕はキーボードを打つ手をとめ、娘を正面から抱きかかえる。

「どした?」僕が訊く。
「ねぇ、ほんとはもっと大事なことがあるんじゃない?」
「うん?」僕は彼女の顔を見る。
すると、娘は、じっと僕の顔を見つめて、言った。

「みんなにあいにきたんだよ」

僕は何の事やらわからない。

「パパの男くさい声を聞くために、太ったおなかをさわるために。
  ママの怒ったり、笑ったり、優しい目を見るために。
  お姉ちゃんとけんかして、なかよく遊ぶために。
  あたしは、みんなに、あいにきたんだよ」

子供は、ほんのちょっと前にエデンの園にいたのだ。
ひょっとしたら、まだ彼女の一部はエデンの園にいるのかもしれない。
この子が僕らに会いに来たのは、本当だろう。
そんなことを、大人はとっくに忘れて生きている。

でもね、僕も君に会いに来たんだよ。
君と、君のお姉ちゃんと、ママに。

子供たちの声には、子供たちの言葉の中には、自分もかつて暮らしていたであろうエデンの園の香がする。
そして、この愚かな父に、子供たちは、いつも勇気をほんのちょっぴりくれるのだ。

ありがとね。あいにきてくれて。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

子供って不思議ですね・・・
まだ、自分に子供居ないからなのかも知れないですが・・・
勉強させられることが多いですね。

ペイネ さんのコメント...

宮崎駿の作品に『天空の城ラピュタ』がある。
この作品が公開された時、私は小学生。
どのシーンで言う台詞か覚えていないがパズーがシータに『誰かに必要とされたから生まれてきたんだ』と言う。
何故か、この言葉が響いた。『誰かに必要とされる』意味なんて考えた事がなかった。
私はここにいて、当たり前のように家族と過ごし、学校へ通い、習い事をする。経験値ゼロの私なりに考えた
『パパとママが必要としてくれているんだ』と。
もっと純粋な頃は『出会う人すべてに会いに来た』と感じていたのかもしれない。
アニメの台詞に違和感を覚えたくらいだから。
小学校高学年時のクラスメイトが『なんで人は生きているの?』と尋ねてきた。『親が必要としてくれたからだよ』と、大人顔で答えた。
それ以上、彼女は聞いてこなかったけど、何を思い、投げかけた質問だったのか。
中学から別々になり、疎遠となったが、彼女は元気だろうか…‥。
また会いに来てね!

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