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2009年10月4日日曜日

ポール・オースター

Paul Benjamin Auster (born February 3, 1947)
is an American author known for works blending absurdism and crime fiction, such as The New York Trilogy (1987), Moon Palace (1989) and The Brooklyn Follies (2005).

彼の作品の中では、「ムーン・パレス」と短編随筆集の「Red Notebook」が好きです。
どちらかというと、彼の不条理小説は、僕には今ひとつです。たとえば、「偶然の音楽」など、目的地の見えない悪夢という意味ではおもしろく読みますが、だから何かが残るというわけではない。

ポール・オースターという作家は詩人から出発したというその出自から、言葉の選択に美しさと鋭さを感じさせてくれます。
そして、彼の最も優れているところは、自分の生活体験から言葉を紡ぎ出すという、作家の持つべき最大の責任を果たしているところです。言葉に体験の裏打ちがあるんだな。
作家は、勿論荒唐無稽なことを書くんであって、自由にイメージ飛翔させなくてはならない。
でもね、体験はとても重要な自信を生み出すものです。
それは作家に限ったことではありませんが。

『時が経つ。一日、二日、あるいは三、四日が過ぎて、少しずつ僕のなかから、救いの手という想念が抜け出ていく。もはやこれまで、とあきらめの境地が訪れる。と、そのときはじめて、奇跡が起きる条件が成立するのだ。何度起きても、それは青天の霹靂だった。起きるのはいつも、まるで予想もしなかった出来事であり、いったん起きたからといって、もう一度それが起きるのを当てにすることはできなかった。したがって、一つひとつの奇跡が、つねに最後の奇跡だった。最後であるがゆえに、僕はつねにふり出しに投げ返された。また一から苦闘をはじめなくてはならなかった。』
(Paul Auster “Moon Place” 訳:柴田元幸)


12歳の時、亡くなった叔父さんから預かった大量の本を読んだというのは事実らしく、「ムーン・パレス」の中でも大事なエピソードの一つになっています。
ですが、やがてホームレス同然となり、セントラルパークで倒れていた彼の前に、小さな少女が現れ、救いの手を差し伸べてくれる。そのシーンの主人公の心情が上の引用です。

彼はこのどん底の暮らしを実際に送っていたようです。
そして、それがあったからこそ、ポール・オースターという作家の文章には、単なる言葉遊びを越えたすごみがあるんだと思いますよ。

もしよければ、彼の講演を観て欲しい。なにか感じるところがあるかも。


Authors@Google: Paul Auster

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