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2009年3月1日日曜日
歴史の勉強
“ A People’s History Of the United States ”
By Howard Zinn
「逝きし世の面影」渡辺京二
この数年の中で読んだ歴史にまつわる本。様々ありますが、その中でアメリカと日本をもう一度考えるきっかけになってくれた本を二冊紹介します。
一冊目はハワード・ジンの「(邦題)民衆のアメリカ史」。
今でもアメリカ合衆国の記念日であるコロンブスのアメリカ発見の日。コロンブスがまず行ったことは、好奇心に駆られ近づいてきたネイティブ・アメリカンたちの人の良さにつけ込んで、彼らの大量殺戮だった。この本の素晴らしさは、様々な当時の資料と証言から、インディアンと呼ばれた人々の部族が無数に滅びていく様子が事細かに語られている点だと思う。
そして、物語としての歴史記述はやがて黒人奴隷から白人の虐げられた人々の暮らしにまで入り込んでいく。
世界の経済的中心であり、世界の警察であると自負するアメリカの、見えにくいもうひとつの側面が垣間見える。それは、現在のアメリカ発の価値観の背景に見えるものである。
アメリカ映画が、退廃へ向かっていく、その道筋は、国家としてのアメリカの退廃そのものを映し出す鏡であったように思う。ドラマの視点から見れば、昨今の小さな日本映画は、確実にアメリカ映画より質が高い。アメリカ映画が世界一だとか、ハリウッドは最高!などとは到底思えなくなっている。長い時間をかけてアメリカは自国の犯した事実を無視し、美しい夢ばかりを吹聴するようになり、堕落していった。つまり、何も語らなくなったのだ。何も語らなくなったアメリカに、この本は陰の部分を語るために姿を現したのだ。
この書物を読み解くことの意味は、幻想としてのアメリカン・ドリームにしっかりと終止符を打つことにあると思う。
アメリカは金融恐慌などというものとはまったく無関係に、その成立当初から死んでいたのかもしれない。この本を社会主義的と批判する声も多いが、民主主義国家という錦の御旗の欺瞞を、我々に教えてくれるこの本の存在価値は大きい。なのに“ A People’s History.....”という、タイトルに現れる、これもまた歴史の一解釈に過ぎないという潔さ。素晴らしい本です。
ペーパーバックは1,800円ぐらいです。お勧めします。
そして、渡辺京二氏の「逝きし世の面影」。
この本は、戦後自国の良さに絶望的になってしまった日本人に、十九世紀から二十世紀初頭、日本を旅した外国人の記録から、ほとんど語られることのなかった日本の失われた風景を、もう一度蘇らせ、日本人を覚醒させようと試みている。そして、それは大成功。
単純な愛国的な書物であれば、それほどの感動もなかったかもしれない。それはイデオロギーの解説だろうから。しかし、この本は外国人達の新鮮な視点から、貧乏で大らかで明るい素朴な日本人のかつての活き活きとした姿を蘇らせることに成功しているばかりでなく、失ってしまったものに対する心の痛みがじわじわと伝わってくるのである。この本はイデオロギーの産物などではありません。
これは我が国をもう一度見直すきっかけになる重要な書物だと思います。
希望が、失ったということを自覚するその絶望の向こう側にあることを再認識させてくれます。
平凡ライブラリーで、どうぞ。
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